―「できるようにする」より、「分かり合える環境づくり」―
小学校に入学すると、子どもたちの生活は大きく変わります。
授業、集団活動、友だち関係など、大人の介入が少ない子ども同士のやりとりが増え、
言葉だけでなく、表情・視線・しぐさ・距離感といった、
非言語を含むコミュニケーションの力が、より求められるようになります。
そのため、就学後になって初めて、
コミュニケーションの難しさが目立ってくるお子さんも少なくありません。
こうしたとき、
「もっと頑張ればできるのでは」
「慣れれば大丈夫なのでは」
と感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、私たちが大切にしているのは、
子どもを変えようとする前に、子どもを“理解する”ことです。
就学後に見られやすいコミュニケーションの困りごと
就学後の子どもについて、保護者の方から次のような相談を受けることがあります。
- 自分の気持ちや要求をうまく言葉にできない
- 困っていても、周囲に助けを求めることができない
- 相手の言葉をそのまま受け取り、冗談や遠回しな表現が分かりにくい
- 会話が一方的になり、やりとりが続きにくい
- 集団の中でどう振る舞えばよいか分からず、不安が強くなる
これらは、知的な理解力の問題とは限りません。
発達特性の有無にかかわらず、
- 状況の読み取り
- 気持ちの整理
- 言葉の選択
といった力が、まだ育っている途中であることが背景にある場合も多く見られます。
「教える」よりも、「分かるようにする」
コミュニケーション支援というと、
「正しい言い方を教える」
「練習を繰り返す」
といったイメージを持たれることがあります。
もちろん、そうした関わりが役立つ場面もあります。
しかし、それ以上に大切なのは、
子どもが“なぜ困っているのか”を大人が理解し、
分かりやすく、安心できる環境を整えること
です。
- 何が分かりにくかったのか
- どの場面で不安が強くなるのか
- どんな関わり方だと安心できるのか
こうした視点で子どもを見ることで、
コミュニケーションが少しずつ楽になり、社会生活が安定していくことがあります。
家庭でできる関わりのヒント
① 行動の前に「理由がある」と考える
うまく話せなかったとき、黙ってしまったとき、
「やる気がない」のではなく、
「どうしていいか分からなかったのかもしれない」
と一度立ち止まってみてください。
言葉だけでなく、
表情や動きに表れているサインに目を向けることも大切です。
この視点だけでも、声かけや関わり方は変わります。
② 気持ちや状況を一緒に言葉にする
出来事のあとに、
「そのとき、どんな気持ちだったと思う?」
「何が一番困ったかな?」
と、振り返りを一緒に行うことは大きな支えになります。
言葉にならない場合は、
選択肢を示したり、表情や場面を一緒に確認したりすることも有効です。
正解を求める必要はありません。
考える過程そのものが、子どもの力になります。
③ できなかったことより「できたこと」に注目する
- 少し伝えようとした
- 相手の様子を見ようとした
- 自分なりに関わろうとした
こうした小さな成功体験を言葉にして伝えることが、
子どもの安心感や自信につながります。
すべてを完璧に行う必要はありません。
できる範囲で、少しずつ取り入れてみてください。
専門職が関わる意味
言語聴覚士(ST)などの専門職は、
「話す・聞く」といった表面的なやりとりだけでなく、
- 表情やしぐさ、視線などの非言語コミュニケーション
- 子どもの強みや特性の整理
- 困りごとの背景の整理
- 環境や関わり方の調整
を大切にしながら支援を行います。
就学後は支援の場が減り、
「どこに相談したらよいか分からない」
と感じる保護者の方も少なくありません。
そうしたとき、
オンラインを含めた支援が、
家庭とつながりながら取り組める一つの選択肢になる場合もあります。
最後に
就学後のコミュニケーションの困りごとは、
子どもが成長し、環境が変わったからこそ見えてきたサインでもあります。
無理に変えようとせず、
まずは理解し、安心できる環境を整えること。
そこから、コミュニケーションは少しずつ育っていきます。
気になることがあれば、
どうぞ一人で抱え込まず、専門職に相談してみてください。
ことサポ 支援チーム(言語聴覚士・医師連携)
※本記事は、言語聴覚士(ST)と医師が連携し、
日頃の支援経験をもとに、一般向けにまとめた情報提供です。
お子さんの状況や環境によって、必要な支援やアプローチは異なります。
個別の診断や効果を保証するものではありません。
